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お知らせ&コラム

2024.08.15
遺留分とは

1 遺留分制度とは

 一定の法定相続人に法定相続分の一部を保障する制度を遺留分制度といいます(民法1042条~1049条)。
 日本では、基本的には遺言による相続を原則としており、被相続人に自己の財産の承継者を自由に定めることを認めています。なお、遺言がない場合や遺言があっても全ての相続財産の承継が定まらない場合に民法の規定に基づき相続財産の承継者が定まります(これを[法定相続]といいます。)。
 遺留分制度は被相続人の自由を一部制限するもので、遺留分を控除した財産についてしか自由に遺言又は贈与によって処分できないことになります。このような制度を認めるのは、近親家族の潜在的持分の保障と生活保障などの政策的な理由からと考えられています。
 一定の相続人に、最低限、その取得が保障されている分を【遺留分】といい、亡くなった方(被相続人)が遺留分の制限を受けずに自由に処分できる分を【自由分】といいます。

2 誰が遺留分を有するのか(遺留分権利者)

 兄弟姉妹を除く法定相続人が遺留分を有すると定められています(民法1042条)。
 詳細は次のとおりです。

⑴ 遺留分を有する相続人

① 配偶者(=亡くなった方の法律上の夫または妻)

② 直系卑属(=亡くなった方の直接の子孫(子どもやその代襲者))
 ※被相続人が亡くなったときに胎児であった方も、生きて生まれれば相続人として遺留分を有します(民法886条)。
 ※養子も直系卑属に当たります。
 ※子の代襲相続人も遺留分権利者であり(民法887条)、複数いれば遺留分は頭数に応じて按分して認められます(民法1042条・901条)

③ 直系尊属(=亡くなった方の直接の先祖(親や祖父母など))
  
 なお、上記の者が、相続欠格、廃除、相続放棄などにより相続権を失った場合には、その者には遺留分の保障もなくなります。 ただし、その場合のうち相続欠格または廃除のときは、代償相続人に遺留分が保障されます。

3 遺留分の割合

 やや複雑ですが、【総体的遺留分の割合】は直系尊属のみが相続人であるときは3分の1その他の場合には2分の1とされ、さらに遺留分権利者が複数人いる場合のそれぞれの【個別の遺留分】は、上記の割合から法定相続人の割合に従って配分され算定されます(民法1042条)

 具体例を出すと、下記のようになります。

 ①子ども(直系卑属)のみが遺留分権利者で2人いる場合
  子ども1人の遺留分:1/2(総体的遺留分)×1/2(法定相続分)=1/4

 ②子ども2人(直系卑属)と配偶者が遺留分権利者の場合
  子ども1人の遺留分:1/2(総体的遺留分)×1/4(法定相続分)=1/8
  配偶者の遺留分:1/2(総体的遺留分)×1/2(法定相続分)=1/4

 ③父母(直系尊属)のみが遺留分権利者の場合
  父母それぞれの遺留分:1/3(総体的遺留分)×1/2(法定相続分)=1/6

 ④父母(直系尊属)及び配偶者が遺留分権利者の場合
  父母それぞれの遺留分:1/2(総体的遺留分)×1/8(法定相続分)=1/12
  配偶者の遺留分:1/2(総体的遺留分)×2/3(法定相続分)=1/3

 ⑤配偶者のみが遺留分権利者の場合
  1/2(総体的遺留分)×1(法定相続分)=1/2

4 遺留分額の算定方法

 具体的な遺留分額の算定は、
「遺留分算定の基礎となる財産額」×「各遺留分権利者の個別遺留分の割合」
によって算定されます。

 上記の「遺留分算定の基礎となる財産」は、「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額」とされています(民法1043)。
 遺産分割協議をする場合の財産とは、
 ①相続人以外の者に対してなされた贈与、遺贈が含まれる点、
 ②相続債務を控除する点
に違いがあります。

 実際には複雑で詳細な検討が必要となりますので、遺留分の請求を検討されている方は専門家に相談することをお勧めします。