お知らせ&コラム
1 個人再生手続とは
借金の返済が困難になった人が、全ての債権者を対象にその返済総額を減額して返済する再生計画を立てて裁判所に認めてもらい、その計画どおりの返済をすることによって、残りの債務(ただし、一部の債務を除く)が免除されるという手続です。
破産手続とは異なり免責不許可事由がありませんので、浪費やギャンブル等の事情がある債務者で、再生手続上の支払総額を支払える見込みがある場合には、破産手続より個人再生手続を選択する方がリスクは少ないといえます。
2 個人再生手続の種類
個人再生手続には、次の2つの種類があります。
【小規模個人再生手続】
⑴ 利用条件
利用するためには、次の条件がそろっていることが必要です。
①個人債務者であること(民事再生法221条2項)
②借金などの負債総額(住宅ローンを除く)が5000万円以下であること
③将来にわたり継続的に収入を得る見込みがあること
⑵ 支払う金額
「最低弁済基準額※1」と「清算価値※2」のどちらか多い方の額を支払うこととなります。
ただ小規模個人再生手続においては、再生計画案について、債権者の書面決議を経なければなりません(不同意の回答をした債権者が債権者総数の半数に満たず、かつ、その債権額が債権者の債権総額の2分の1を越えないことが必要―法230条6項)ので、「大半の債権者からは不同意が出ないであろう」と見込めそうな額でなければなりません。
※1「最低弁済基準額」
債務総額が3000万円以下の場合、
①債務総額が100万円より少なければその額、
②債務総額を5で割った額が100万円より少なければ100万円、
③債務総額を5で割った額が100万円から300万円の範囲であればその額、
④債務総額を5で割った額が300万円より多ければ300万円
債務総額が3000万円を超え5000万円未満の場合
⑤債務総額の10分の1の額ということになります。
※2「清算価値」
個人再生手続には、「再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するとき」という不認可事由が規定されていますので、弁済総額は、破産における配当額(清算価値)を上回るものでなければなりません(法231条1項)。
【給与所得者等再生手続】
⑴ 利用条件
上記小規模個人再生の条件に加え、
④収入が定期で、かつ、変動の少ない債務者であること
が必要です。
典型的には、給与所得者(サラリーマン、公務員等)ですが、年金等その他の収入源であっても広く対象となると考えられています。収入の変動については、少なくとも年収の変動が5分の1程度であれば、範囲内と考えられています(法241条2項7号参照)。
⑵ 支払う金額
「最低弁済基準額」と「清算価値」のどちらか多い方の額を支払うこととなるのは、小規模個人再生と同様ですが、さらに可処分所得要件を満たさなければなりません。
具体的には、支払総額が、
可処分所得(収入から所得税、住民税、社会保険料及び最低生活費を控除した額)の2年分より高い金額でなければならないという要件があります(法241条2項7号ハ)。
なお、最低生活費については、政令で定められており、具体的な可処分所得の算定は、専門家にご相談することをおすすめします。
⑶ 債権者の意見は不要
上記のようにして、要件1ないし3の額を算定して、いずれか多い方の額を支払うこととなります。前述のように、小規模個人再生の場合は、債権者の書面決議が必要でしたが、給与所得者再生においては、この要件は不要なので、上記要件1ないし3を満たした計画案であれば(他の認可要件を満たす限り)認可されます。