お知らせ&コラム
これまで親権者を定める場合においては、婚姻中の共同親権を除き、全て父か母かを定める単独親権制度であったものですが、婚姻中以外でもすべての場面において、民法の改正により、共同親権が選択肢に入ることになりました(改正後民法819条1項ないし5項)。
そこで本コラムにて概要を説明いたしますが、本コラム作成時点(令和7年1月8日)で未施行の法律であるため、事前に同時点で作成した内容であることにご留意してご覧くださいますようお願い致します。
1 離婚後共同親権の判断基準
共同親権とするか単独親権とするかは基本的に父母の協議で定めますが、協議ができないとき、あるいは調わないときは裁判所が定めることとされています。
その判断基準については、子の利益のため、父母と子の関係、父と母との関係その他「一切の事情」を考慮しなければならないと規定されています(改正後民法819条7項本文)。
もっとも、
「父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき。」(同項1号)、
「父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無、第1項(協議離婚)、第3項(出生前の離婚)又は第4項(認知後の親権)の協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき。」(同項2号)
「その他の父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるとき」
は単独親権としなければなりません(同項本文後段)。
注意が必要なのは、民法819条7項は、上記のような特別な事情があれば単独親権とするとしつつも、そうでない場合にはあくまでも一切の事情を考慮して判断するとしている点です。要するに、改正民法は単独か共同かのどちらかを原則とする趣旨を規定しているものではありません。
親の責務として、父母間の人格尊重と協力義務が新設された(改正後民法817条の12第2項)のも親権者としてのあるべき姿を示したものといえるでしょう。
2 親権行使の方法等
⑴ 親権の共同行使の原則
共同親権の場合、親権は父母が共同して行います(改正後民法824条の2)。
ただし、
「他の一方が親権を行うことができないとき」(同項2号)
「子の利益のため急迫の事情があるとき」(同項3号)
には、それぞれ親権の単独行使が認められています。
「子の利益のため急迫の事情があるとき」とは、入学試験の結果発表後の入学手続のように一定の期限までに親権を行うことが必須である場合や、緊急に医療行為を受けるため医療機関との間で診療契約を締結する必要がある場合など、さまざまな場合が想定されています。
⑵ 「監護及び教育に関する日常の行為」の例外
「監護及び教育に関する日常の行為」は親権の単独行使が可能とされています(同条2項)。
具体的には、食事や塾、習い事、アルバイトなどと言われていますが、父母の個別の親権の単独行使が矛盾した場合などの調整がどうなるかは未だに判然としていません。
⑶ 共同行使が困難な場合
共同親権の行使が必要とされる場面で、父母間に協議が調わない場合であっても、子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、父又は母の請求により、当該事項に係る親権の行使を父母の一方が単独ですることができる旨を定めることができるとされています(同条3項)。
3 具体的な施行日など
上記の改正民法の施行日は、公布日である2024年5月24日から2年以内の政令で定める日とされており、具体的な日程はまだ決まっておりません。
なお、施行日以前に離婚した者には上記法律は遡及適用(さかのぼって適用されること)されません。
その場合でも、親権を持たない者が家庭裁判所に親権者変更の申立をして共同親権への変更を求めることは可能とされています。
離婚後の共同親権には、婚姻中の支配関係(DVや虐待など)の継続のおそれや、合意なき共同親権の不都合性など、まだまだ指摘される課題がありますので、今後の指針や運用を注視していく必要があるでしょう。