お知らせ&コラム
1 給与差押えを受けている状況での自己破産について
借金を返すことなく放置してしまうと、債権者から債務名義(判決など)がとられて、給与の差押えをされることがあります。
給与差押の範囲は全額ではなく、
「給与額面から所得税や住民税等の税金を控除して残った額のうち4分の1(ただし、月額給与が44万円を超える場合は、33万円を超える部分については全額)」
ですが、生活に多大な支障が生じることは避けられません。
また、勤務先にも借金を返せていないことが知られてしまうと立場が悪くなってしまう上、差押金額の計算は複雑なので会社にも迷惑をかけてしまうことになります。
そのため、自己破産をする場合は、給与差押を受けるより前に申し立てることが望ましいことは明らかです。
しかし、給与差押を受けたことでようやく自己破産手続きをとることを決心するケースも散見されますので、今回は同時廃止事件の場合と管財事件の場合に分けて手続きの流れを説明いたします。
※ 同時廃止事件や管財事件の説明は、コラム「自己破産手続きについて」を参照ください。
2 管財事件の場合
管財事件の場合、破産法第42条より、裁判所が破産手続開始決定をした段階で、すでに開始されている強制執行手続は効力を失うと定められているため、裁判所の破産手続開始決定をもって、給与差押えは効力を失い、すぐに給与満額を受け取れるようになります。
もっとも、実務上では、破産管財人が、強制執行を許可した裁判所に自己破産開始決定が出たことを上申することによって、給与の差押えが止まります。これは自己破産を管轄する裁判所と強制執行を行っている裁判所が同じではないため、何らかの連絡をする必要があることが理由だと思われます。
3 同時廃止事件の場合
管財事件と異なり、同時廃止事件の場合は、破産手続開始決定がなされただけでは、強制執行は失効しません。自己破産開始決定(同時廃止決定)がされた場合には、その後、免責決定が確定するまでの間、すでにされている強制執行は中止し、免責決定の確定により、ようやく強制執行はその効力を失います(破産法第249条)。
そのため、同時廃止事件の場合は、自己破産手続開始決定から免責許可決定が確定するまでの間、差押えの範囲に相当する給与(主に給与の4分の1)は、支払いが留保されることになり、すぐに受け取ることができません。なお、免責許可が確定すれば、手続き期間中に留保されていた差押え分の給与をまとめて受けることができます。
ただし、この場合も、自己破産を管轄する裁判所と強制執行を行っている裁判所が同じではないため、破産者が執行裁判所に自己破産開始決定が出たので強制執行を中止するよう上申する必要があります(通常は代理人弁護士がいれば代理人弁護士がやってくれます。)。また、免責許可が確定した際も、同様に、強制執行の取消の上申をする必要があります。
4 すでに差し押さえられた給与の取り扱いについて
すでに差し押さえられた給与は差し押さえた債権者が受け取りますが、弁護士などによる受任通知発送後は、債権者が、債務者が支払不能になっていることを知りますので、一部の債権者の給与差押は管財人が否認権を行使し、取り戻しをすることがあります。これは、自己破産手続きにおいては、債権者が平等に扱われるべきであり、いわば抜け駆けによる債権回収は許されないとの考えに基づくものです。
管財人が否認権を行使して取り戻した給与は、破産財団に組み入れられ、財団債権などの弁済に充てられますが、余剰は債権者に平等に配当されます。そのため、破産手続開始決定が出されるまでに多額の給与が差押えされた場合には、管財事件となる可能性が高くなります。管財事件となると予納金が必要になりますので、債務者にとっては好ましい結果とはいえません。
給与の差押えを受けている場合には、早めに弁護士に相談し自己破産申立を検討することをお勧めします。