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2026.07.15
自己破産をしても支払義務がなくならない「非免責債権」とは?

1 非免責債権とは
 「自己破産をすると借金はすべてなくなる」と思われがちですが、実際にはそうではありません。
 自己破産手続では、裁判所から免責許可決定を受けることで、原則として借金などの支払義務が免除されます(破産法253条1項本文)。もっとも、一定の債務については、社会的な要請や被害者保護の観点から、例外的に支払義務が残されるものがあり、これを「非免責債権」といいます(破産法253条1項ただし書き)。

2 非免責債権の種類

①税金や社会保険料(破産法253条1項1号)
 所得税、住民税、固定資産税、国民健康保険料などの公租公課は、自己破産をしても支払義務はなくなりません。
 これらは国や地方公共団体の財政基盤を支える重要な財源であるため、国庫の収入を図る観点から免責の対象外とされています。

②養育費や婚姻費用(破産法253条1項4号)
 養育費や婚姻費用分担金、扶養料など、親族間の扶養義務に基づく債務も非免責債権です。
 これらの請求権は人の生存を確保し、また幸福を追究するうえで(憲法13条参照)、不可欠な性質を有すると考えられるため、免責の対象外とされています。離婚後の養育費について、「相手が自己破産したから支払われなくなる」という誤解もありますが、そのようなことはありません。

③悪意による不法行為の損害賠償(破産法253条1項2号)
 詐欺や横領など、悪意をもって他人に損害を与えた場合の損害賠償債務も免責されません。
 非免責とされる趣旨は、当該請求権を免責の対象とすることは加害者に対する制裁面から好ましくないと考えられる点にあります。
 「悪意」については、単なる契約違反や一般的な過失とは区別され、他人を害する積極的な意欲(害意)を意味すると解されています。

④生命・身体を害した場合の損害賠償(破産法253条1項3号)
 上記③を除き、破産者が故意または重大な過失によって人の生命や身体に重大な被害を与えた場合の損害賠償債務も非免責債権です。例えば、飲酒運転による重大事故などが典型例といえるでしょう。
 非免責とされる趣旨は、人の生命・身体は法益として重要と考えられる点にあります。

⑤雇用関係により生じた使用人の請求権や預り金返還請求権(破産法253条1項5号)
 個人事業主が破産する場合の雇用していた従業員の未払給与や残業代なども非免責債権です。なお、法人破産でよく問題となる未払賃金はまた別の話となりますのでご注意ください。
 これは、使用人(従業員)を保護する観点から、免責されないものとして取り扱われます。

⑥隠していた債権者に対する債務(破産法253条1項6号)
 裁判所に提出する債権者一覧表に、破産者が知っている債権者を記載しなかった場合、その債務は免責されません。「知りながら」とは、故意による場合だけでなく、過失による場合も含むと解されています。
 これは、債権者名簿に記載のない債権者に対しては意見申述期間の通知(破産法251条2項)がなされず、その債権者は免責についての意見を述べる機会を奪われることになるため、そのような債権者を保護するものです。
 なお、破産債権者が破産者の破産手続開始を知っていた場合には、手続参加が可能なため、その債権者は債権者名簿に記載されていなくても免責の対象となります(破産法253条1項6号かっこ書き)

⑦罰金等(破産法253条1項7号)
 罰金や科料、刑事訴訟費用、過料など、公的制裁としての性質を持つものも、秩序罰として本人に負担させるべきとの観点から、免責されません。

3 まとめ
 非免責債権は「破産手続の中で配当を受けることもでき、回収しきれなかった場合にはその残額について破産後も請求ができる債権」と理解すると分かりやすいでしょう。
 自己破産を検討する際には、「どの借金がなくなり、どの支払義務が残るのか」を事前に確認しておくことが重要です。特に、税金、社会保険料、養育費などがある場合には、破産後の生活設計にも大きく影響するため、早めに弁護士へ相談することをお勧めします。